先日発売となった、10月始まりのデルフォニックス手帳。気分を高めてくれる一冊とは出会えましたか。
一年を共にした手帳から、まっさらな手帳へ。移行のタイミングは、今年を振り返りながらも新たに挑戦したい使い方や書き方の想像が膨らむものです。
今回は、そんな今の時期に合わせ、デルフォニックスで働くスタッフのリアルな手帳を見せてもらいました。グラフィックデザイナー、営業職、直営店の本部スタッフと、3本の記事にわたりさまざまな職種のメンバーが登場します。
新たな手帳の使い始めに向け、「次はどんな使い方をしよう」と、想像のきっかけになれば嬉しいです。
今回、手帳を見せてもらったのは、WEBや販促制作などを通してデルフォニックスのブランディングに携わるデザイナー。こちらの「DELFONICS DIARY STORE」や、直営店で配布中の手帳のビジュアルブックのデザインも担当している。
常にさまざまな部署と連携しながら複数のプロジェクトを進行しているデザイナーは、どうやって手帳を使っているのか。
愛用している手帳は、ダイアリー リフィル A6 タイプB。
持ち運びやすいA6サイズで、マンスリーとウィークリーで構成されている。ウィークリーページは、左ページが週間スケジュール、右ページが方眼メモになったホリゾンタルフォーマット。
デルフォニックスでは、スケジュールはデジタルの予定表で社内共有しているため、時間軸での予定は手帳で管理していないスタッフも多い。今回話を聞いたデザイナーもその一人だ。
では手帳の主な役割はというと、ウィークリーページをタスク管理に特化して活用しているそう。
ホリゾンタルを使う理由は、一日にやることと今週中にやることを分けて管理したいから。ブロックタイプやバーチカルタイプでは週で管理するスペースが足りない。長期的なプロジェクトから即日対応を求められるものまでタスクは多岐に渡るため、二軸での管理が欠かせないという。
左ページは、毎日のTODOリストとして活用。右ページには今週中のタスクや関連するメモを記入している。完了したタスクは、線でどんどん消し、終わらなかったり変更となったものは、矢印で次のページへ繰り越していく。見せてもらった手帳の左ページは、ほとんどが線で消されていた。
現在の使い方にたどり着いたのはおよそ半年ほど前で、手帳との向き合い方については長期に渡って試行錯誤を繰り返してきたそう。
「自社の手帳以外にもさまざまな手帳を試してきました。インポートダイアリーや、特殊フォーマット、プロダクトデザインとして好みなものなど。以前は、後で見返して分かりやすい手帳を目指してプロジェクトの進行過程を記録したりしていたけれど、続かなかった。いろいろと試した中で一番しっくりきたのが、10年ほど前に知り忙しい時期に活用していた、情報カードに一日の仕事を書いて消していくというシンプルなタスク管理方法でした。ただ、カードや付せんはどうしてもバラバラになってしまうので、内容はそのまま、蓄積していく手帳にまとめることに。 “手帳をしっかり作る”ことを諦めて、付せんのような気軽さで使っています。」
TODOリストというと、PCやスマートフォンでも手軽に使えるツールがたくさんある。なぜ「手で書いて消す」方法が合っていると感じたのか聞いてみた。
「デジタルツールも試しました。便利だと思うし、見た目も整っていて綺麗。ただ、その“整っている”ことは裏を返せば“情報がフラットである”ということ。どれが一番重要なのか、早くやるべきなのか、パッと見た時に捉えるのが難しく感じます。アナログなら筆圧や文字の大きさ、図形などで直感的に残すことができる。ちょっと間違えてタップして消えてしまったり、電波が悪い場所で更新できていなかったりという小さなストレスや不安もない。単純に、“終わったものを自分の手で消す”行為が好きでしっくりきたというのもあります」
今に至るまでに試した方法を順に聞くと、現在の方法のきっかけとなった情報カード以外にも「○○がやっていた方法で…」とさまざまなところからヒントを得て次々に取り入れているのが印象的だった。誰がやっていたか、どんな仕事をする人の手法か、というところはさほど重要でなく、「自分のやっていることをクリアに捉えられそう」な方法を探す過程がワクワクするのだという。
デザイナーという職業では、小さいものから大きいものまで、納期までの期間や工数、重要度もさまざまなタスクが発生する。連携する部署もその時々で異なり、共有されるタスクリストやガントチャートのフォーマットもそれぞれ。複雑な業務を管理して一つずつこなしていくために、定期的に見直しながら自分の働き方に適した方法を模索しているのだ。
手帳の中身と共に、一緒に持ち歩いている愛用品も見せてもらった。ボールペンは、指でこすったり水にぬれてもにじまない油性タイプがこだわり。カランダッシュ エクリドールにはブルーインク(仕事の予定用)、849にはレッドインク(マーキング用)、LAMY energyにはブラックインク(プライベートの予定用)を入れて使い分けている。メインで使用するカランダッシュのインクは、油性とは思えないなめらかな書き心地が気に入っているという。
ほかにも、 BOX&NEEDLE の紙ファイルや、オレンジカラーが印象的な付せんケースなど。中でも目を引くのは、写真中央、びっしりとグラフィックデザインにまつわる情報が印刷された手帳カバーだ。
「紙の規格や、フォントの実寸サイズ、頻繁に使うDICやPANTONEの色番号、カラーコード、線幅など、デザイン業務の中で必要な情報をまとめて自作しました。クリアカバーに挟んで使っています。冊子やシールなど小さな印刷物を制作することも多く、在宅勤務の時など実寸で印刷確認が難しい場合でも、パッと見て文字サイズや線幅の印象が確認できるため便利です」
また、ロルバーン カップ・マルタンは、デザインラフやミーティング用のメモパッドのように活用しているとのこと。デザインラフを書く時は、0.7~2.0mmの太めのペンシルや万年筆を気分に合わせて使い分け。ここでも「手書きは筆圧に気持ちが乗りやすく、思考に集中できる。書いた情報もそのままの形で記憶に残りやすい」と、アナログツールへのこだわりが感じられた。PCで打ち込んだ文字と比べ熱量や思考の履歴が直感的に捉えやすいことは、タスク管理だけでなくクリエイティブの面においても不可欠なのだと言う。
書いたメモやラフは切り離してスキャンし、見返しやすいようにスマートフォンのメモにプロジェクトごとに保存しているそうで、それぞれの利点を、自分の働き方に適した方法で活用するという一貫したスタイルを感じた。
手帳の中身や共に使う愛用品について聞く中で印象的だった「今の結論はこれ」という言葉。
「より自分に合った方法を、これからもきっと探し続けるのだろう」と話す。
業務の中で必要な情報や工程を細分化して、それぞれの性質にあったツールを探し、柔軟に試し続けるということ。より思考をクリアに、情報を捉えやすく。デルフォニックスのブランドを支えるデザインは、そういった妥協することのない日々の積み重ねのうえで作られているのだと感じた。
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